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法人化を機に、新たな一歩を
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一般社団法人日本教育工学協会(JAET)は、2026年3月末をもって54年の歴史を持つ任意団体から一般社団法人へと移行し、新たな出発を迎えました。これもひとえに、会員の皆様、団体会員・賛助会員の皆様、そしてJAETを長年にわたり支えてくださったすべての関係者の皆様のご理解とご協力のたまものと、心より深く感謝申し上げます。
(JAETの歩みと実績)
JAETは1971年、学校教育の改善を図る重要な学問領域として教育工学が全国的な注目を集めていた時代に、各地に誕生した研究会を束ねる全国組織として誕生しました。以来半世紀以上にわたり、実践者・研究者・企業が連携しながら、我が国における教育の情報化を理論と実践の両面から牽引してまいりました。
2025年には第51回全国大会をつくば市で開催し、全国から多くの皆様にご参集いただきました。また、2015年にスタートした「学校情報化認定」事業では、認定校が4,000校を超え、年3回の教育の情報化実践セミナーも着実に回を重ねています。全国37の地域研究団体を中核とする団体会員、約40社の賛助会員、100名を超える教育工学研究者の皆様とともに積み上げてきた、この歩みを誇りに思います。
(法人化の背景と意義)
業務・予算の拡大に伴い、コンプライアンスへの対応や財務の透明性確保といった課題が年々大きくなってまいりました。とりわけ、学校情報化認定事業においては、認定校の増加に伴い審査負担が増す一方、システムの維持・改善を持続可能な財政基盤のもとで行うことが急務となっていました。法人化は、こうした課題を根本から解決し、JAET各事業をより安定した形で継続・発展させるための、必然の選択です。
法人化にあたり、理事・フェロー・監事・顧問といった新しい役割分担のもと、透明性の高いガバナンス体制を整えました。しかし、会員でなくとも全国大会で発表できるなど、JAETが長年大切にしてきた開かれた学びの文化は、これからも変わりません。ルールを整えながらも、JAETらしい柔軟さと温かさを守り続けてまいります。
(変化する時代に寄り添うJAET)
GIGAスクール構想第2期が本格化し、生成AIの教育活用が急速に広がるなど、学校現場は大きな転換期を迎えています。データに基づく授業改善、個別最適な学び、教師の働き方改革など、解決すべき課題は山積しており、実践と研究をつなぐJAETへの期待はかつてなく高まっています。一般社団法人として新たな基盤を得た「新生JAET」は、こうした時代の要請に応えるべく、学校情報化認定事業のさらなる充実をはじめ、各事業を一層強化してまいります。
JAET会員の皆様、そして教育の情報化・教育工学に関心をお持ちのすべての方々に、新生JAETへのご参加とご支援を心よりお願い申し上げます。ともに、日本の教育の未来を切り拓いてまいりましょう。
一般社団法人日本教育工学協会会長/東京学芸大学 教授 高橋 純
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2026年度第1回「教育の情報化」実践セミナー2026in岡山
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『デジタル学習基盤の活用を前提とした次期学習指導要領の改訂』
2026年度の第1回教育の情報化実践セミナーは、岡山県倉敷市のくらしき作陽大学で開催します。
また、教育関連製品を活用した実践事例の発表や最新の教育関連製品の企業展示も行います。
岡山県内はもちろんのこと、全国から多くの皆様のご参加をお待ち申し上げております。
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学校情報化認定 優良校・先進地域の認定 〜より使いやすいシステムをめざして〜
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JAET副会長・学校情報化認定委員会委員長/中村学園大学 教授 山本朋弘
1.認定・表彰の実績
2015年に開始した学校情報化認定では、学校情報化診断システムへ登録した学校数が延べ4000校を越えました。GIGAスクール構想の成果を示すエビデンス(成果指標)として活用いただき、認定された学校や自治体が増えてきています。
2026年2月末段階での認定・表彰の実績は、以下のとおりです。全国の学校情報化を代表する学校や地域によって、本事業の普及・進展が期待されるところです。
学校情報化優良校(認定) 4022校
学校情報化先進校(表彰) 51校
学校情報化先進地域 49地域
(先進地域は、2017年度まで表彰、その後認定)
2.認定システムの改修について
学校情報化認定システムでは、システムの改修を定期的に実施して、操作性を改善させるとともに、政策や指針に合わせてチェックリストを改訂してきました。
昨年度から、GIGAスクール構想の情報端末環境に対応して、チェックリストを見直し、児童生徒のICT活用環境の整備に関する項目を変更して、児童生徒の情報端末の使用頻度を入力してもらうようにしました。また、指導計画等の提出については、審査対象から外して、参考資料としています。
2026年度は、学校や教育委員会からの申請や審査員の審査がスムーズに進められるように、抜本的なシステムの改修を行う予定です。今後も、申請する学校において、より使いやすいシステムになるよう改善を進めていきたいと考えています。
3.優良校再認定・先進校表彰について
○優良校(2023年度認定校)の再認定
2023年度に優良校として認定された学校の認定期間は、2026年3月31日で終了です。ただし、2026年6月までに再認定された場合は、優良校として継続している学校となります。7月以降に認定される場合、新規の認定となりますが、ID等は継続して使用いただけます。今後、再認定の期間については、認定期間の終了日の前後3ヶ月(1月から6月まで)として運用する予定です。
○先進校の応募
優良校として認定を受けていて、項目のレベルが一定以上に達していれば、先進校に応募することができます。優良校の学校は、応募に挑戦してみませんか。
入賞した学校は、全日本教育工学研究協議会全国大会において表彰されます。なお、先進校への応募は、4月から6月頃まで受け付けています。これまでに先進校として表彰されている学校でも、別のカテゴリで応募いただくことができます。
○先進地域の申請
先進地域では、自治体内の学校8割以上が優良校に認定されている場合、自治体から先進地域の認定を申請することができます。事前にご相談いただきますと、スムーズに進めることができます。
(問い合わせ:https://jaet.jp/nintei/contact/)
4.申請へのアドバイス
学校情報化認定事業の審査は、数十名の審査委員のボランティアで進めております。審査において、優良校としての要件を満たしていないと判断された場合は、残念ながら「差し戻し」となり、申請した学校等が修正した上で、再提出いただき、再審査となります。申請の前に、「学校情報化優良校認定申請へのアドバイス」を一読いただきたいと思います。
(URL:https://jaet.jp/nintei/advice/)
申請時のチェックだけでなく、取り組みの見直しにもつながります。より効率的に本事業をご利用いただけるようになると思います。ご協力の程、お願い申し上げます。
パスワードの失念等の問い合わせが増えています。学校内でのログイン時のアカウントやパスワードの引継ぎは、適切に進めてください。
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学校情報化認定 優良校紹介 加速する教育DX ~第4次高森町新教育プランが目指すもの~
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熊本県高森町教育委員会 教育長 古庄 泰則
1.はじめに
熊本県高森町では、「高森に誇りを持ち、夢を抱き、元気の出る教育」をスローガンとした「高森町新教育プラン」を策定しています。本町の教育改革の最大の特徴は、町長の強力なリーダーシップのもと、行政、教育委員会、学校が「三位一体」となって取り組んでいる点にあります。人口減少やグローバル化といった社会の変化を「風」として捉え、教育を町づくりの核と位置づけ、教職員ファーストの精神で改革を推進しています。
2.教育DXの歩みとICT環境
本町のICT環境整備は、平成24年の全普通教室への電子黒板配備から本格化しました。町独自の光ケーブル網整備を礎に、国に先駆けて1人1台のタブレット端末環境を構築し、デジタル教科書や校務支援システムも早期に導入しました。民間企業や大学等との産学官連携を継続することで、常に最新の知見を取り入れ、現在は全国トップクラスのICT活用環境を維持・更新し続けています。
3.自立した学習者を育む学びの変革
本町では第4次新教育プランの最重点事項として「自立した学習者の育成」を研究主題に掲げ、高森町教育研究会を中心に取り組んでいます。近年は文部科学省「リーディングDXスクール事業」の指定を受け、全校で「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指した授業改善を加速させてきました。
研究の成果を披露する場として、年間3回「高森町公開授業」を開催しました。6月、11月、2月の授業公開を行うことで、1年間を通した子どもたちの「成長のプロセス」を全国に発信しました(右写真)。
「自立した学習者」とは、①自ら課題を設定し解決の見通しを立てる力、②他者と協働して課題を解決する力、③自らの学びを把握し調整する力、の3つの資質・能力を備えた姿です。公開授業では、子どもたちが1人1台端末とクラウドサービスを文房具のように使いこなし、他校の児童生徒や外部専門機関とオンラインで繋がりながら、自らの問いを探究する「高森型探究学習」を展開しています(左写真)。
ICTを使うこと自体を目的とするのではなく、「ツール」として活用し、子どもたちが主体的に学びをデザインする学習者主体の授業モデルを構築しました。この学びの変革こそが、予測困難な未来をたくましく切り拓く人材育成の基盤と考えます。
4.子どもが創る地域の未来
小中一貫教育の集大成として実施される「子ども議会」は、本町の教育と地域が繋がる象徴的な場です。中学3年生が町政に提案した「高齢者向けeスポーツの開発」は、実際に全52カ所の公民館で活用され、認知症予防と多世代交流に貢献しています。
また、学校から始まった「タブレット図書館」を町民全体へ開放するなど、教育DXの成果が地域全体の利便性向上や活性化に直接結びついています。
5.おわりに
これまでの取り組みの結果、成人式(二十歳の集い)のアンケートでは、約93%の卒業生が「高森に誇りを持っている」と回答し、ICT教育が卒業後の進路で役立っていると実感しています。教育の成果は着実に「人づくり・町づくり」へと繋がっています。これからも「風を興す」挑戦を続け、教育DXをさらに深化させながら、地域に根差したイノベーションを創出し、未来を拓く人材を育み続けます。
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学校情報化認定 優良校紹介 学び続ける教師~情報機器を活用した授業研究~
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久喜市立砂原小学校 教諭 齋藤 果織
1.はじめに
本校は、令和4年度から久喜市教育委員会より「『久喜市版未来の教室』構想を踏まえた汎用的な資質・能力を育む先端技術を活用したSTEAM化された学び」の研究委嘱を受けています。校是「やってみよう」、学校教育目標「動く 楽しむ 切り拓く」を合言葉に授業研究に取り組んでいます。
2.学び方を学び、社会と繋がる総合・生活科
総合的な学習の時間と生活科の時間は、学び方を学ぶ学習であると捉え、はじめに、総合と生活科に重点を置きました。
令和5年度からは授業時数特例校制度を活用して総合と生活科の時数を15時間増やし、特に時間を確保して探究させたい場面に充て、探究学習を充実させてきました。4月には総合開きを行い、「自分で学ぶ力をつける時間が総合である」と子供たちと共通理解を図っています。その後、探究したことを他学年や保護者の方、地域の方に発信する場を設け、子供たちの学びが社会と繋がるよう働きかけています。
学び方を学び、社会と繋がる学習経験を積むことで、子供たちは学びに一層主体的になりました。
3.教科の学習と情報活用能力
総合や生活科で学び方の基盤を作りながら、令和6年度以降はその他の教科においても探究的な学び方を取り入れました。その中で、情報活用能力を育成しています。
例えば、1年生の国語の説明文の学習では、「何が書いてあるのかな」「大切な言葉や文はどこかな」と課題意識をもたせ、本文を打ち込んだスライドをデジタルで配付し、問いならばページを青、答えならば赤に変える活動を行いました(左写真)。
また、参考資料をQRコードで読み取ってアクセスさせたり、話合いの様子を動画で撮って振り返らせたりする活動も取り入れました(右写真)。文章読解や話合いという国語の指導事項を押さえつつ、情報機器の操作スキルを身に付けられるよう、授業を展開しています。
また、プレゼン作成時にイラストを引用する場面に合わせて著作権の指導をするなど、機器を使いながら情報活用能力を身に付けていくことを意識しています。
4.生成AIの活用
保護者の方の同意を得て、生成AIの活用にも挑戦しています。例えば、生活科のおもちゃづくりでアドバイスを求めたり、外国語の発音チェックをしたり、作文の添削をしたりする場面で使用しました。
生成AIを活用するにあたり、「生成AI導入講座」を行い、使い方や気を付けることを指導しています。(資料)特に、「生成AIは間違っていることがある」「自分で判断する力をつける必要がある」という意識をもたせるようにしています。
5.おわりに
情報機器は、学びの場になくてはならないものになりました。子供たちにとって、文房具の一つになっています。その中で、確かな学びの場を提供できるよう、指導の仕方を常にアップデートしていく必要があり、学び続ける教師であることが重要であると痛感しています。
今後も情報機器の活用を踏まえ、授業研究に努めていきたいと考えています。
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(解説)OECDティーチングコンパスをひもとく(1)教師エージェンシー
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会員の皆様に解説記事をお届けする企画です。今回は「OECDティーチングコンパスをひもとく」シリーズをお送りします。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(博士後期課程)に在籍する学生たちに解説を担当していただきました。それぞれが関心をもった考え方や用語についてご紹介いただいております。最前線で学術研究に取り組む学生たちが、何に興味をもっているのか、ぜひご期待ください。
広報委員会
教師エージェンシーとは
東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科 須藤久也
まずは原文の定義から、教師エージェンシーについて考えていきます。
“Teacher agency refers to teachers’ belief that their purposeful actions and decisions – individually or collectively – can positively influence their professional practice, student learning experiences and broader educational contexts.”
ここから以下のことが読みとれます。
エージェンシーは「belief 信念」である。
具体的には、「目的のある行動と意思決定が、教師の実践と児童・生徒の学びにポジティブな影響を与える」という信念である。
加えて、教師エージェンシーは「自分ならできる」という高い自己効力感、倫理的責任、変化へのコミットメント(献身性)によって形作られると述べられています。
ここまでで、教師エージェンシーという言葉のおおよその輪郭が見えてきたかと思います。
「あなたの周りにはエージェンシーをもつ人はいますか?」と聞かれたら、パッと思い浮かぶ人がいるのではないでしょうか。
AIとのCo-Agency(共同エージェンシー)
教師個人のエージェンシーに加えて、同僚、生徒、生徒の親など、教師を取り巻く様々な関係者との間で相互に影響し合う「共同エージェンシー」についても言及されています。
さらに、この共同エージェンシーのモデルには、その一員として「AI」も組み込まれています。
AIがエージェンシーを発揮する?と疑問に思うかもしれませんが、「AIエージェント」という言葉がある通り、AIが自律的に人間と関わる未来がすでに近づいており、5年後、10年後には当たり前の光景になっているかもしれません。
共同エージェンシーモデルの重要な点は、「AIは人間の事務作業を自動化してくれる単なる便利ツールである」という代替モデルではなく、「AIは人間の能力を補完または拡張するパートナーである」という補完・拡張モデルにあります。
こうした考え方はまだ概念レベルにとどまっており、「現実の教室でどのように人間とAIが共同エージェンシーを発揮するべきか?」という具体的な問いについてはこれからの実践と研究の蓄積が必要となります。
教育現場でのAI統合における「AIをひとまず使ってみる」という第一フェーズでは「AIに頼ると頭を使わなくなる」という認知的オフローディングの問題や、「AIの出力した内容をそのままコピペして使用する」といった倫理的懸念など、様々な課題が浮き彫りになっています。こうした現状において、AIを共同エージェンシーのパートナーとして捉える視点は欠かせません。
エージェンシーは「belief 信念」であるという冒頭の定義に立ち戻ってみると、AIとの最適な関わり方を考える上では、それぞれの教師が「自分はどんな信念をもってAIと向き合うのか」を改めて見つめ直すことが求められているのではないでしょうか。
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