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2026.5.6

(解説)OECDティーチングコンパスをひもとく(1)教師エージェンシー

会員の皆様に解説記事をお届けする企画です。今回は「OECDティーチングコンパスをひもとく」シリーズをお送りします。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(博士後期課程)に在籍する学生たちに解説を担当していただきました。それぞれが関心をもった考え方や用語についてご紹介いただいております。最前線で学術研究に取り組む学生たちが、何に興味をもっているのか、ぜひご期待ください。

広報委員会

教師エージェンシーとは

東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科 須藤久也

まずは原文の定義から、教師エージェンシーについて考えていきます。

“Teacher agency refers to teachers’ belief that their purposeful actions and decisions  – individually or collectively – can positively influence their professional practice, student learning experiences and broader educational contexts.”

ここから以下のことが読みとれます。

  • エージェンシーは「belief 信念」である。
  • 具体的には、「目的のある行動と意思決定が、教師の実践と児童・生徒の学びにポジティブな影響を与える」という信念である。

加えて、教師エージェンシーは「自分ならできる」という高い自己効力感、倫理的責任、変化へのコミットメント(献身性)によって形作られると述べられています。

ここまでで、教師エージェンシーという言葉のおおよその輪郭が見えてきたかと思います。

「あなたの周りにはエージェンシーをもつ人はいますか?」と聞かれたら、パッと思い浮かぶ人がいるのではないでしょうか。

AIとのCo-Agency(共同エージェンシー)

教師個人のエージェンシーに加えて、同僚、生徒、生徒の親など、教師を取り巻く様々な関係者との間で相互に影響し合う「共同エージェンシー」についても言及されています。

さらに、この共同エージェンシーのモデルには、その一員として「AI」も組み込まれています。

AIがエージェンシーを発揮する?と疑問に思うかもしれませんが、「AIエージェント」という言葉がある通り、AIが自律的に人間と関わる未来がすでに近づいており、5年後、10年後には当たり前の光景になっているかもしれません。

共同エージェンシーモデルの重要な点は、「AIは人間の事務作業を自動化してくれる単なる便利ツールである」という代替モデルではなく、「AIは人間の能力を補完または拡張するパートナーである」という補完・拡張モデルにあります。

こうした考え方はまだ概念レベルにとどまっており、「現実の教室でどのように人間とAIが共同エージェンシーを発揮するべきか?」という具体的な問いについてはこれからの実践と研究の蓄積が必要となります。

教育現場でのAI統合における「AIをひとまず使ってみる」という第一フェーズでは「AIに頼ると頭を使わなくなる」という認知的オフローディングの問題や、「AIの出力した内容をそのままコピペして使用する」といった倫理的懸念など、様々な課題が浮き彫りになっています。こうした現状において、AIを共同エージェンシーのパートナーとして捉える視点は欠かせません。

エージェンシーは「belief 信念」であるという冒頭の定義に立ち戻ってみると、AIとの最適な関わり方を考える上では、それぞれの教師が「自分はどんな信念をもってAIと向き合うのか」を改めて見つめ直すことが求められているのではないでしょうか。

(出典)

OECD Teaching Compass:

https://www.oecd.org/en/publications/oecd-teaching-compass_8297a24a-en.html

OECD ティーチング・コンパス(教師の羅針盤):日本語訳

https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/about/projects/edu/education-2040/teaching-compass/Teaching%20Compass%20full%20document_Japanese%20translation%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%B9%20REV.pdf