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2026.8.9

今,この先生に話を聞きたい(3)どう名づけるかで、授業は変わる―サイエンスとアートのあいだから

明治大学 国際日本学部 教授 岸 磨貴子

 授業力が高まるとは、何が変わることなのでしょうか。説明の仕方、発問、板書。そうした技術はもちろん大切です。ただ私は、目の前の子どもの見え方や聴こえ方、待ち方が少しずつ変わっていくことも、授業力だと考えています。

 授業にはサイエンスとアートの側面があります。どんな学びを起こしたいのか、そのためにどんな活動や支援が必要か、その学びをどう見取るのか。これはサイエンスの側面で、この視点から省察すると、うまくいったこと、ずれ、次の改善点が見えてきます。

 一方、それだけでは語れない場面があります。授業中にぼーっとする、発言しない、別のことをしている。そうした反応を「やる気がない」と名づけるのか、「進め方に問題があった」と名づけるのか。それとも、その場から差し出された「オファー」として受けとめるのか。名づけ方しだいで、見えてくる現実は変わります。

 「オファー」とは、相手が差し出してくれた次の展開のきっかけのことです。受けとめて、何かを加えて返す。私はこれを演劇の言葉でYES ANDと呼んでいます。これが授業のアートの側面です。ここでの省察は、「私はそれをどう受けとめ、何を返したのか」「どんな出来事が立ちあらわれたのか」「どんな別の関わり方がひらかれたのか」に目を向けることになります。

 授業は設計するものであり、その場の反応とともにつくり直し続けるものでもあります。計画通りに進める日も、オファーを受け取って、いつもと違ったかたちで子どもと関わってみる日もあっていい。昨日は見えなかったものが、今日は少し見える。聞こえなかった声が、少し聞こえる。待てなかった時間を、少し待てるようになる。その変化の中に、授業をつくるおもしろさがあるのだと思います。