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2026.6.8

(解説)OECDティーチングコンパスをひもとく(2)教師のウェルビーイング(Teacher well-being for thriving professionals)

会員の皆様に解説記事をお届けする企画です。今回は「OECDティーチングコンパスをひもとく」シリーズをお送りします。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(博士後期課程)に在籍する学生たちに解説を担当していただきました。それぞれが関心をもった考え方や用語についてご紹介いただいております。最前線で学術研究に取り組む学生たちが、何に興味をもっているのか、ぜひご期待ください。

広報委員会

教師のウェルビーイングって?

東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科 稲木健太郎

最近,よくウェルビーイングという言葉を耳にします。最初は「なにそれ?」と思っていました。調べたり聞いたりすると,幸福とは少し異なる,よりよく生きることや,その人らしく充実していることに近い概念らしいと分かってきました。

今度は「教師のウェルビーイング(Teacher well-being)」が示され,それって普通と何が違うの?とまたちょっと疑問に。

そのまま気にしなくてもいい気もしましたが,少しだけ見てみました。すると,教師のウェルビーイングは,一般的には給与,業務量,勤務時間,学級規模,その他の制度的な規定という側面から論じられてきたとあります。なるほど,なんとなく分かる気がする。

でもその先には,「これらの要素は今なお重要であるが、教師が自らの職業から見いだす意味や充実感の多層性を捉えるには、それだけでは十分ではない。」と書いてあるじゃないですか。んー?教師だとなにか違うの?

そうして示されていたのが,以下の3つ。教師のウェルビーイングを政策や制度の話を超えてより包括的に捉える必要性があるとのことでした。

・知的側面:intellectual dimension

・社会情緒的側面:socio-emotional dimension

・身体的側面:physical dimension

分かるような分からないような。それぞれ以下のようなことかな?と考えました。

<知的側面 intellectual dimension>

 「明日の授業、こんな工夫をしたら子どもたちが面白がるかな」と考えたり,子どもの姿から授業を見直したり,自分も学び続けていると感じられたりする状態?

<社会情緒的側面 socio-emotional dimension>

 職員室で「今日こんないいことがあって!」や「実は今、この学級経営で悩んでいて…」と喜びや弱音を安心して言い合える同僚との関係性がある状態?

<身体的側面 physical dimension>

 勤務中に休憩できる時間がある,体調が悪いときに休める,安全で健康を損なわずに働ける,退勤後に体を休める時間がある状態?

で,「包括的」だから,どれかだけでいいわけではなく,どれもが重要で,それらが満たされて「教師の豊かさ」になるのかなぁ,と。

なるほど確かに,給与や業務量,勤務時間に加え,授業や教育活動に対する楽しみ,同僚との関係性も,自分の豊かさに関わることだなと思います。あ,もちろん身体的側面も。

また,教師のウェルビーイングを単に「働きやすいかどうか」だけでなく,「自分は何のために教えるのか」という目的意識や「自分はどのような教師でありたいのか」という専門職としてのアイデンティティとも結びつけられていました。

確かに!と,思う方もいらっしゃるでしょう。

そして,「でもその前に,それを支える条件はどう整うのだろう。」ということも,思うかもしれません。

ぼくは思いました。

一教師の努力で得られることと,そうじゃないことは確かにありそう。

でも,豊かさってなんだ?となったときに,教師ならではの豊かさがあること,そしていろいろ大切だ,ってことが分かったことで,知らなかったときより身近にある教師らしい豊かさに気づけるようになる(といいな)と思いました。


本稿では,OECD Teaching Compass の “Teacher well-being for thriving professionals” の節を参照しました。

OECD(2025)OECD Teaching Compass: Reimagining Teachers as Agents of Curriculum Change.